特集 医療と経済格差
病院現場から見た格差社会の現状
笹岡 眞弓
1,2
,
内藤 雅子
2,3
1文京学院大学
2日本医療社会事業協会
3済生会京都府病院福祉相談室
pp.624-627
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100348
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■ソーシャルワーカーの実感―格差社会
景気の回復が謳われる中,「格差社会」を時代のキーワードにする日本の現代社会では,疾病と貧困の関係がさらに密接になりつつある.確実な調査データはないが,各病院の業務統計では「経済的な相談」あるいは「経済・社会保障に関する相談」はここ 2 年で確実に増加している.済生会京都府病院における経済問題の相談件数は,図 1 のように平成 12 年から 13 年にかけてかなり増加し,以後減っていない.神奈川県の某大学病院では,統計の取り方が済生会と同様ではないが「経済的相談」は平成 16 年度 1,253 件から平成 17 年度は 1,545 件へ,「社会保障制度の紹介・相談」は同じく 1,415 件から 1,640 件へと増えた.相談件総数の 10,599 件から 12,049 件へという増加分の実に 3 分の 1 以上の相談が制度紹介を含む経済的支援援助で占められている.
援助内容の項目は「医療ソーシャルワーカー業務指針」(健発第 1129001 号)にある,①療養中の心理的・社会的相談,調整援助,②退院援助,③社会復帰援助,④受診受療援助,⑤経済的問題の解決,調整援助,⑥地域活動となっており,⑤を上述のように 2 つに分けて細かくみている.その数字は,大学病院というよりは近隣の核となる病院であるだけに,平均的な現状が表れていると言ってよいだろう.
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