特集 病気と社会を考える
健康の社会的決定要因への介入―イギリスNHSの現場に見る健康格差対策
岩永 直子
1
,
近藤 克則
2,3
1読売新聞医療情報部
2日本福祉大学社会福祉学部
3健康社会研究センター
キーワード:
健康の社会的決定要因
,
健康格差
,
格差是正
,
慈善団体
,
NHS(National Health Service,国民保健サービス)
Keyword:
健康の社会的決定要因
,
健康格差
,
格差是正
,
慈善団体
,
NHS(National Health Service,国民保健サービス)
pp.19-23
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101857
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病気は,遺伝子や生活習慣などの生物学的要因以外にも,「社会」の影響も受けて発症する.「健康の社会的決定要因」には,低所得や失業などの社会経済状態や,医療政策をはじめとする制度・政策のありようなどが含まれる.例えば,うつには所得水準との関連が認められ,所得の低い層では高い層に比べうつ状態が6.9倍も多いことが報告されている1).また,窓口負担額の引き上げに伴って,低所得者ほど受診を我慢しており2),男性では死亡率で3倍もの健康格差があることが日本の高齢者でも確認されている3).
このような「健康格差」あるいは,その原因である「健康の社会的決定要因」の重要性が再認識されるにつれ,欧米では対策がとられ始めている.例えば,欧州連合(EU)では,それを単独テーマとするサミットが開かれ,政府の対策方針文書が英国などで発表され,スウェーデンは公衆衛生法の改正を行った4).米国でも保健・人間サービス省(U.S.Department of Health and Human Services)のAHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality)は医療格差報告書(The National Healthcare Disparities Report)5)を出し,CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は,そのウェブサイトに健康格差(Health Disparities)のコーナーを設けている.そしてWHOは2009年の総会で,健康格差対策に取り組むことを決議するに至っている6).
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