特集 医療と経済格差
中国における医療格差問題の現状―日本への示唆
陳 金霞
1
1株式会社 産業構造総合研究所 公益サービス本部
pp.645-650
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100353
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
中国は,ここ十数年,経済の著しい発展により,国民の医療消費も急速に増加している.現在,中国では医療費抑制,医療サービス効率化を目指す医療システム改革が行われている.医療制度について,様々な改革案がモデル都市において試験的に実施されてきたが,1998 年 12 月に「都市職員・従業員基本医療保険制度に関する国務院の決定」(以下,「決定」)が公布されることにより,全国都市部労働者の医療制度の指針が設立され,現在は全国都市部に展開されつつあり,保障の対象者の拡大や制度の改革が行われている.
しかし,医療事情は国によって様々で,同じ国でも地域により,種々の事情によって制度の整備等が異なることがある.現在,中国においてこれら健康・医療の格差問題が深刻である.この医療における格差問題はいくつかの視点から整理することができる.例えば,医療保険制度による地域間および都市と農村の間の格差,人々の所属・身分・職種等による格差,被保険者と無保険者の格差,所得と経済格差による格差,医療資源配分の不均衡による医療水準の地域格差等が存在している.また,これらの格差により,人々の医療へのアクセスの問題や健康水準の格差問題等が生じている.現在,中国にとって,すべての国民が皆平等・公平に医療を受けられるような医療システムの構築は大きな課題であると考えられる.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.