特集 公衆衛生のリーダーシップ
日本における健康の社会格差
本庄 かおり
1
1大阪大学グローバルコラボレーションセンター
pp.30-35
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208100
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はじめに
所得・学歴・職種などによって表現される社会経済状況と健康の間に関連が見出されることについてはよく知られている1).さらに近年では,個人の社会経済的状況だけではなく,居住する地域の社会経済状況や所得格差,社会的関係資本(ソーシャルキャピタル)といった要因が健康に影響している可能性も明らかにされつつある.2008年に世界保健機関(World Health Organization;WHO)は社会的健康決定要因に関する委員会の「健康の社会的健康決定要因に関するコミッション最終報告」を採択した.これを契機に健康格差の解消に向けた政策的取り組みが広く議論されるようになった2).
日本においては,経済的低迷の中で所得格差や貧困問題が注目され,その流れと連動する形で社会格差への関心が高まった.その後,公衆衛生分野においては健康の地域格差や社会経済状況による格差に関する知見が蓄積されている3).この流れを受けて,2012年に発表された「21世紀における国民健康づくり運動:健康日本21(第2次)」においては,健康格差の縮小が基本姿勢の一つに挙げられ,現在,その具体的な施策のあり方について検討が進められているところである.
そこで,本稿では,これまでに日本で把握されている社会経済状況とさまざまな健康指標との関連に関する知見を基に日本における健康の社会格差について概観し,その後,今後の健康の社会格差縮小対策のインプリケーションについて考えてみたい.
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