短報
片麻痺患者の歩行スピード可変域の評価について
青田 安史
1
,
窪田 俊夫
1
,
山口 恒弘
1
,
角田 忠男
1
1中伊豆リハビリテーションセンター
pp.56-57
発行日 1988年1月15日
Published Date 1988/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103954
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Ⅰ.初めに
日常行われている健常人の歩行をみると,求められる目的に応じて随時適切な歩行スピードが選択され,その選択の幅は,遅いスピードからかなり速いスピードまでの広い範囲にわたっており,かつそれぞれのスピードにおける歩行の安定性は保たれていると考えられる.一方,片麻痺患者では,麻痺の程度,年齢,代償能力などの要因により、到達しうる歩行スピードはおのずから限界があり,また目的に応じて変化させうる歩行スピードの範囲も非常に狭いことが経験的に知られている.
一般に歩行に障害がある患者では,通常の歩きかたにおける歩行スピードが,歩行能力の一つの指標1)として用いられているが,この歩行スピードを変化させうる範囲がどの程度であるかということも歩行能力に関する何らかの指標となると考えられる.このことに関して徳田2)は速歩―自由歩行の速度差を算出し,この速度差を歩行速度の変動に対する身体機能の余裕力として捉えている.
このような知見をふまえ,通常のスピードを基準とし,どの程度スピードを遅くすることができるか,また速くすることができるかという歩行スピードを変化させうる範囲を“歩行スピード可変域”と呼ぶこととし,この指標が片麻痺患者の歩行能力の中でもっとも基本的な項目の一つである歩行の安定性とどのような関連性があるかを検討することにした.
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