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特集 終末ケアにおける理学療法・作業療法
進行性神経・筋疾患に対する終末ケア―作業療法士の立場から
Terminal Care for Progressive Neuromuscular Diseases-A occupational therapist's view
市川 和子
1
,
田中 勇次郎
1
Kazuko ICHIKAWA
1
,
Yujiro TANAKA
1
1東京都立神経病院
1Tokyo Metropolitan Neurological Hospital.
pp.517-523
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103605
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はじめに
終末ケアと聞くとまず「ホスピス」という言葉に代表されるような状況,たとえば癌の末期の患者に対して,延命のための積極的な医療処置は行わず,苦痛の除去と残された短期間の人生をより快適に送るための援助を示すような場面が想起される.しかし進行性の神経・筋疾患に於いては,個々の例について後に述べるように,必ずしも生命予後が一定していない.また不幸な転帰をとる場合でもその直接の原因が原疾患そのものによるよりは,尿路や呼吸器系の感染症,心不全などによるものが多い.多くの神経・筋疾患の中には原因の究明や治療法の開発が確立されていないいわゆる“難病”が含まれているが,その場合には症状好転を意図する試行錯誤がたゆまず行われている.パーキンソン病に特徴的であるが,疾病の進行状況に応じたdrug controlなどの積極的な医療処置が必要な場合がある.最近椿ら1)は筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)の気管切開後呼吸器装着例で間歇的離脱が可能となり,その中の数例において歩行や経口摂取ができた例を挙げている.このことは,他の神経系難病に比べはるかに進行の速いALSに於ても,bed ridden,人工呼吸器装着から自力歩行,経口摂取可能とADLの段階が上下し得ることを示唆している.
本稿ではADLがごく狭い範囲に限られている状態,いわゆるbed riddenの状態(人工呼吸器装着の状態を含む)等にある進行性神経・筋疾患の患者に対する作業療法士の立場からの援助を述べたいと思う.
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