特集 終末ケアにおける理学療法・作業療法
<随想>
終末ケアの経験から―終末ケアと理学療法の接点に想う
鶴見 隆正
1
1高知医科大学病院
pp.524
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103606
- 有料閲覧
- 文献概要
なんとも表現しえない気分で理学療法部に戻り,ため息とともに椅子に腰をおろした.疲れと自責の念でいっぱいである.というのも,つい2カ月前までは平行棒内で歩行訓練していた朗らかで快活な14歳の少年が,O2吸入と補液を受け,目の輝きは以前と変わってはいないもののベッドに横たわっている.その少年にベッドサイドの理学療法と称して約20分間共にいたからである.このような複雑な心境になる原因はいくつか考えられる.
ここ数年,末期患者に対する医療について論議されつつあり,その方向づけについて模索している.ホスピスという単語は一般の人々にも浸透してきているが,その実態は十分に普及しているとは言いがたく,限られた病院で行われているのが現状である.本来,人間性の復権を理念としているリハビリテーション医学がこの問題について先駆的な考え方や,あるいはimpairment,disability,handicapを統合した具体的な実践方法について未だ確立しておらず,チームの一員であるPTにとっては悩む原因の一つである.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.