とびら
セラピストに求められる経験と年数
小西 紀一
1
1京都大学医療技術短期大学部
pp.441
発行日 1986年7月15日
Published Date 1986/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103586
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日本に理学療法士・作業療法士の身分法が誕生して20年を経過し,養成施設の増加にも伴い,これからは「量より質」の時代であると耳にすることが多くなって来た.これは殊に養成施設の教官や臨床実習指導者等,教育に関わる人達からよく聞こえて来る.多くの場合,学生・実習生への激励のコトバとして述べられているのだが,中に指導者の立場にある人達の自戒のコトバとして述べられることもある.また,卒業を目前に控えた学生が一人職場に就職するのを検討する際に「経験不足」を理由に尻込みを示す時にも似たようなコトバが聞かされる.確かに弁証法の原理の一つに「量的変化は質的変化に転換する」とは言われいるが,ここで言われる量的変化とは,例えば掛算のように,
(1年の経験内容)×(次の1年の経験内容)
といった,年数が1の階乗であるような「量」を繰り返しているだけでは「質」的変化に結びつかない.むしろ,加算のように,
(1年の経験内容)+(次の1年の経験内容)
ということになって「質」的変化に結びつく量的変化が積み重ねられるところであろう.
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