Japanese
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講座
歩行(基礎から臨床まで) 3.高年齢者の歩行
Gait-From Basic Studies to Clinical Assessment 3. Gait of the Elderly
徳田 哲男
1
Tetsuo TOKUDA
1
1東京都老人総合研究所人間工学
1Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology
pp.347-352
発行日 1986年5月15日
Published Date 1986/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103566
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Ⅰ.はじめに
歩行分析に関する研究対象は,健康な若年者の歩行特性や,逆に片麻痺患者などの病的跛行を取り扱った報告例は多いものの,高年齢者を対象とした報告となると極めて限定されているのが実情と言えよう.
この中で,古くはSpielberg(1940)21)がパノラマ写真機を利用し,高年齢者の歩行パターンを分析している.1960年代に入ると日常活動での歩行動作と転倒との関連をAzarg(1964)2)がまとめている.また,Steinberg(1966)22)は正常な歩行,多くの高年齢者に見られる生理的老化による歩行(senile gait)および各種の病的異常歩行について紹介し,Murray(1969)16)は写真撮影法により老年男性の,Finley(1969)8)は筋電計の利用により老年女性の歩行パターンの特徴をそれぞれ報告している.1970年代以降では,国内外で高年齢歩行者についての動作分析6,32),生理機能3),さらには日常生活面での徒歩圏に関する研究20)などが積極的に取り上げられてはいるものの,若年歩行者を対象とした研究実績に比較して高年齢者の歩行特性は十分な研究蓄積がなされているとは言い難い.
本稿では,高年齢者の歩行機能について,①歩行姿勢や歩行バランスなどの歩様形態,②筋活動,呼吸・循環動態などの生理機能,③日常活動面より捉えた歩行能力の3項目を主体に,現在までに報告されている研究知見のいくつかについて紹介する.
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