特集 老人問題と公衆衛生
高年齢と心身の機能
斉藤 一
1
Hajime SAITO
1
1(財)労働科学研究所
pp.598-604
発行日 1986年9月15日
Published Date 1986/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207328
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■はじめに 60年簡易生命表によると,日本人の平均寿命は男性74.84歳,女性80.64歳で,世界ではじめて女性の平均寿命が80歳の大台にのった.一方,65歳以上の老年人口比率は,ヨーロッパの国々ほどではないが,60年国勢調査の速報では10.2%と,10人に1人が65歳以上の老人という高齢社会になっている.この高齢化のテンポはわが国の場合,世界でも最も速く進行してきたが,それは出生率と死亡率の低下によっている.
このような長寿社会は喜ぶべきことであるが,老人の自殺の増加やひとり暮らし老人,寝たきり老人など,行政の老人福祉施策が要請される問題を生む一方で,労働行政の面でも国は高年者のニーズに対応する施策として,本年10月1日施行の法改正を行い,定年を少なくとも60歳まで引き上げるよう事業主の努力義務を規定したほか,定年退職者やその他の高年者の能力と多様なニーズを考え,国が55年以降補助対象として全国の特別区・市町村各単位で,おおむね60歳以上の高年者の自主的運営組織として設立され,既に全国で266ヵ所を数えるシルバー人材センターを同法によって認知し,高年者の雇用によらない短期的,かつ臨時的就労についての規定が含まれている.
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