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Ⅰ.はじめに
これまで3回にわたって,力動精神医学の観点から患者を理解することの必要性とその意義,および心理学的・精神医学的診断の方法と治療の実践について総説と基礎的解説がなされてきたが,本章では今まで述べられた幾つかについて,実際の症例を通して説明してゆきたい.
実例は某リハビリ・センターで,筆者がここに数年行っているリハビリ医,整形外科医,看護者(NR),作業療法士(OT),理学療法士(PT),言語治療士(ST),ソーシャルワーカー(MSW)とのリエゾン・コンサルテーションの場に提出され,検討された症例を使って解説して行くことにする.(なお,症例はプライバシー保護のため一部変更してある.)
周知のように,リハビリにおける治療援助は,運動麻痺や機能障害への積極的な回復促進とともに,その疾病や外傷によって二次的に生じた日常生活動作(ADL)の能力障害(disability)に対して,その適応の拡大をはかること,さらには障害による社会的不利(handicap)への環境調整や改善,必要に応じた職業指導などが準備されている.これらの前進的で実際的な訓練指導の方針に加えて,今日では力動精神医学の観点からの援助の必要性も指摘されてきている.
具体的には,リハビリの過程で生じるさまざまな心的経験や反応,つまり患者の身体障害への適応(adjustment to disability)ないしは障害の受容(acceptance of disability)をめぐって生じてくる心理的課題に,手助けしてゆくことがめざされる.特に,リハビリ・スタッフとの治療関係を困難にさせている患者への対応の場合には,以下に示すような力動的な検討が是非とも大切である.
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