プログレス
インスリン依存型糖尿病の運動療法
佐藤 祐造
1,2
1名古屋大学総合保健体育科学センター
2名古屋大学医学部第三内科
pp.195
発行日 1986年3月15日
Published Date 1986/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103531
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糖尿病の治療上適度な運動が好ましい影響を与えることは,よく知られている.しかし,運動を行うことにより逆に糖尿病状態が悪化したり,低血糖を惹き起こすなど危険な状態を招く場合も少なくない.
1.運動と糖尿病性代謝異常
糖尿病患者が運動を行う際には,患者の糖尿病のコントロール状態の良否により,急性代謝反応の現れ方は大きく異なっている.①糖尿病のコントロール状態が悪く,インスリン欠乏が極限状態にまで達したケトーシスを伴う糖尿病患者が運動を行えば,糖尿病状態はなお一層悪化する.②糖尿病のコントロール状態が良好な患者では,運動により血中ブドウ糖の利用が促進され,血糖は低下する.③インスリン依存型(Ⅰ型)糖尿病患者では肝臓での遊離脂肪酸からケトン体への転換(ケトン体生合成)が亢進しており,血糖値が正常範囲内でも,いいかえればコントロールの良否にかかわらず,運動中だけでなく,運動終了後にも血中ケトン体レベルは上昇傾向にある.④インスリン治療中の患者では,運動とインスリン皮下注射との時間的間隔,皮下注射の部位も重要な因子となっている.
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