Japanese
English
講座 高次神経機能の評価法(4)
痴呆
On Dementia.
鹿島 晴雄
1
Haruo Kashima
1
1慶応義塾大学医学部精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, Keio University, School of Medicine.
キーワード:
痴呆
,
痴呆の分類
,
痴呆の評価法
Keyword:
痴呆
,
痴呆の分類
,
痴呆の評価法
pp.963-969
発行日 1985年12月10日
Published Date 1985/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105510
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Ⅰ.痴呆とは
痴呆(dementia,Demenz,demence)という用語はラテン語demensに由来するもので,de・menseすなわち解体した心を意味している.痴呆は精神医学の歴史において様々な意味で使われてきた.広く慢性の精神障害を指し,精神分裂病に相当するものが含まれていたこともある.しかしその後痴呆という用語は器質痴呆,すなわち一旦は成人の水準に達した知能が器質的脳損傷により,永続的,不可逆的に欠損した状態(痴呆とは状態像であって疾患名ではない)とされるようになった.ここで知能とは判断力,思考力といった狭い意味だけでなく,知能の予備条件とされる記憶や知識,注意・集中力等も含む全般的知的機能というべきより広い意味で用いられている.さらに精神運動性,情動性といった器質性の人格障害も痴呆では通常みられる.また知能の不可逆的欠損という点は進行麻痺の痴呆がペニシリン療法,発熱療法等の治療で改善されることから従来より必ずしもそうとは云えないとされてきた.特に近年,痴呆概念の拡大と治療面での進歩が相俟って治療可能な痴呆や可逆的痴呆ということがしばしば云われるようになってきている.さらに痴呆は失語,失行,失認等の脳の局在症状とは異なるものとされている.確かに知的機能の全般的障害は狭い限局性の脳損傷では生じないことが多い.しかしながら限局性であってもその広がりがある程度以上大きいと知的機能の全般的障害が生じることも事実であり,その場合は脳損傷の部位,広がりに応じて様様な程度に失語,失行,失認を伴うことになる.
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