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はじめに
脊髄損傷患者は麻痺以外に排尿障害・痙性・褥創・自律神経過反射など多くの問題を抱えている.中でも尿路の障害は,命にかかわるほどの最重要な問題である.ことに頸髄損傷患者の場合には,排尿障害に加えて排尿処理能力の低さが重なって,この問題をことさら複雑かつ困難にしているといえる.患者が家庭に帰ったのちも,引きつづき行えるような尿路管理法を工夫・開発し,患者や家族が確実にその手技を習得するまで,看護するものは根気よく指導する必要がある.
当院リハビリテーション科における入院患者は,昭和46年12月の開設以来,昭和56年12月までに773名で,そのうち脊髄損傷患者は44名(不全麻痺23名,完全麻痺21名)と決して多くはないが,入院期間が長いため,常時数名が入院していることになっている.この44名のうち頸髄損傷患者は29名(不全麻痺19名,完全麻痺10名)であった(表1).これらの完全麻痺患者のうち,入院時排尿処理が円滑に行われていないと思われたものは21人中17人で,そのほとんどは経尿道的に長期間カテーテルが留置されていた(表2,表3).
当院に入院した患者は最も短い者で4ヵ月,長い者は9年と発症からかなりの月日が経っているため,膀胱はいわゆる慢性期に当たるが,その管理は必ずしも順調ではない.しかも,それは初期治療の誤りから,二次的におこった膀胱機能障害に対しての次善の策にとどまることが多く,その結果も必ずしも満足がいくものではない(表4).そのような姿を見るにつけ,初期の膀胱管理の大切さを痛いほど感じている.
四肢麻痺患者で,排尿処理に多くの特徴的な問題をもったいくつかの症例を提示し,これらの患者に対する排尿処理に関して我々の考えを述べたい.
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