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はじめに
本来,麻痺手の機能再建術とは,末梢神経障害,癩,筋ジストロフィー,脳性麻痺,ポリオなどを対象として行われてきたものである.頸髄損傷患者(以下,頸損者と略)の麻痺手に対するものは,その中の一つで,1949年,Bunnellらによって行われたのが最初である.
しかし,当時の頸損者にとっては,尿路・呼吸器感染症,褥創など,合併症のコントロールが最大の問題であり,生命予後を良くする事だけで精一杯であった.近年,医学の進歩により,上記の合併症がコントロールされ,生命予後が改善されるに従い,改めて上肢機能の重要性が見直されてきた.最近の頸損者に対するアンケートの結果では,一番望んでいる機能として,上肢機能を選んだ者が,全体の75.7%で,他の下肢機能,膀胱直腸機能,性感などを大きく引き離していた.
そうした状況の中で,リハビリ訓練,flexor hinge splint,RIC splint(Rehabilitation Institute of Chicago)など様々な装具,外的動力による道具により,上肢に関するADLの改善は著明である.しかし,Mobergの言っている人間の手の本来の目的,①feeling②gripping③contacting peopleを考えると,それらは必ずしも充分ではない.さらに,装着時の煩雑さも含めると,マイナス面も少なくない.この観点に立って,頸損者の評価および治療を考える時,手術による,患者自身の手に対する機能改善も,忘れてはならない一つの方法と言える.
しかし,手術自体は我々が行うわけではなく,術者は整形外科の中でも極く限られた手の外科の専門家だけである.そして実際には,対象患者,術者,リハビリスタッフ,その他の状況がそろって,はじめてできる手術といえる.そこで今回は,リハビリに携わる者として,どの程度の麻痺に,どのような手術があるかを知り,その適応の考え方の基本を理解してもらうのが目的である.
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