報告
頸髄損傷四肢麻痺における機能レベルと移動・移乗能力との関係
水上 昌文
1
1国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
pp.359-364
発行日 1991年5月15日
Published Date 1991/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103281
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Ⅰ.緒言
我が国における頸髄損傷の発生率は産業構造,社会形態の変化により年々増加の傾向にある.この頸髄損傷により引き起こされる四肢麻痺という障害は,胸腰髄損傷と異なり一髄節の違いにより残存機能に大きな差が生ずることは言うまでも無いことである.この損傷高位(以下,機能評価により得られた結果より判定するため機能レベルと略.)とADLとの関係については多くの報告が有り1-7),教科書的に用いられてはいるものの最近の技術の進歩により実情に合わなくなってきているものが多い.しかもそれらは皆一髄節ごとの機能レベルに沿ったものである.頸髄損傷では,この一髄節の範囲内でも大きな機能差があり,特にC6レベルにおいて顕著である.この一髄節の中での機能の差を上肢の残存機能から評価し細分類する方法が諸家の報告にみられるが,中でもZancolli(1976)の分類は現在世界的にももっとも一般的に用いられているものである.表1はその原表よりの抜粋である.この解釈については国内各施間でばらつきがみられるが,われわれはStrong,with,CompleteをMMTでFair以上と解釈し分類を行なった.
今回われわれはこのZancolliの分類に沿って,頸髄損傷者の機能レベルと移動・移乗能力との関係を明らかにしレベルごとの目標を設定するため,頸髄完全損傷者96名の移動・移乗動作の達成率を調査した.本論ではその結果を述べるとともに,もっとも幅広い機能を有しADLの自立か否かの境界となることが予想され,頸髄損傷者全体の中でもその比率ががもっとも高いC6レベルを中心に移動・移乗の方法に関する私見を述べる.
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