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はじめに
近年我が国でもようやく障害の重い肢体不自由者の主体的な足として,電動車椅子(Electric Wheelchair,以下EWCと略)が各地で使用されるようになってきた.東京都が,昭和49年にEWC検討会を行った当時に比べ,内容的にもいろいろなタイプのEWCが開発され市販されている.これらの背景には,EWCの公費支給制度の確立や,安全性や性能を高める意味から,JIS規格(JIS-T-9203)の制定が大きな要因を占めていることは明らかである.昨年7月1日厚生省1)は,10年ぶりに実施した身体障害者調査結果のなかで,全国の身障者(18歳以上の在宅者)は約200万人(人口比2.4%)の数に及ぶと発表した.またそのなかで肢体不自由者は約112万人(57%)を占めている.身障者となった原因としては,脳血管障害や脊髄損傷などの疾患が最も多く,交通事故,労働災害などによる損傷は前回(昭和45年)より50%を越える増加とされている.全体の傾向としては,この10年間で身障者の重度,高齢化がかなり進んでいることが特徴とされている.このように今後,障害の重度化,老齢化をむかえるにあたって,これらの障害者の生活圏の拡充を確保するためには,その基本となる移動に対しての対策(移動システムの体系化)が重要となる.とりわけ重度の障害者にとって,EWCは移動手段として大きな役割をはたすものであり,適切な指導ならびに環境の整備がなされたもとで使用されることが望まれる.そこで本稿は,特に我が国のEWCの現況をハードウェア(HardWare)面だけでなく,メインテナンスなどについても問題点を整理し,あわせて今後の展望について述べてみよう.
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