簡易電動車椅子の開発

Development of the Simplified Electric Wheel Chair.

はじめに

　人間が日常動作を行うにあたっては下肢による歩行機能が重要な役割りを果している．しかし，最近とみに悪化した交通事情とこれに伴なう交通事故発生及び産業災害ならびに不慮の事故による重度の歩行機能障害者が増加しており，現社会状勢ではこのような事故発生の防止に努めているにもかかわらず日夜このことが繰り返されている．

　不幸にしてこのような下肢機能障害を受けた人々にとって，（手動式）車椅子は第2の足とも言えるものであるが，下肢のみならず上肢も機能障害を受けた人々にとっては操作が円滑に行えず足になり得ない．

　一方，欧米においてはすでにこのような重度障害者のための電動車椅子が開発され，市販あるいは無償交付されているが，日本においてはようやく開発が始まった段階である．

　本研究の最終の目的は，上下肢機能障害者が起床から就寝までの日常生活動作を行うのに十分な機能を有する電動車椅子の開発であるが，その第一段階として従来の手動式車椅子に簡単に電動装置を付加する方式の，簡易電動車椅子を開発したので報告する．