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はじめに
ここ数年来理学療法士,作業療法士(以下PT・OTと略)の養成校の新設あるいは新設予定のニュースは,臨床で働くセラピストにとっても,身近な関心事になってきている.養成校の専任教官の確保,臨床実習施設の確保など,いずれも不可欠な条件であることから,直接,間接にOT・PTの教育機関との協力を要請される機会は今後急増すると考えねばならないだろう.
歴史的には,外国人教師やOT・PT養成に熱意と関心をもっていた比較的限定された施設や病院に頼らざるを得なかった創世期を過ぎ,今や本格的な国産化の時代に入ったともいえよう.教育的風土や医療風土の異る日本に,やや強引に移植されたOT・PTが,短期間に獲得した技術面でのハードウエアーはまさに,驚威的ですらある.しかしながら,日木の風土に定着したソフトウエアーを持ち,医療の発展の一翼を担っていくには,これからが正念場であろう.OT・PTの資格をもっているだけでチヤホヤされたハネムーンの時期はすでに過去のものとなり,一人一人のセラピストのアインティティ一が関係者のみならず,当事者であるOT・PT内部でも厳しく問われていく時期に来ているとも思われる.養成校にいようと,病院や施設で働いていようと,どんな問題も“あすは我が身”的な発想が必要なのかもしれない.
現在,OT教育に関連した筆者の立場は,最終学年時の通称インターン(医学教育でかつて存在したのとは,卒業資格を得るにも必須であるという点では異り,従って国家試験の受験資格に当然含まれているという点では似ている)を,精神科領域で2~3カ月ずつ(養成校によって異る),年間を通して十数名受け入れている.その経験を通して得られた臨床実習に対する筆者なりの考え方や疑問を養成校の教育の当事者たちに投げかけてみたい.要望という形式で表現できなかったのは,ひとつは,当面利害を共有しない傍観者的倫理1)をもち得ないからであり,二つには,臨床実習のスーパバイザーが,養成校に形式的にも心理的にも従属するようなニュアンスを持つテーマに何やらひっかかるからである.養成校と臨床実習施設の初期の関係にみられたように,どちらかが,どちらかに要望したり,されたりの相互関係から,それぞれの自己主張と妥協からのみ得られる協力関係へと,脱皮していく時期にきたのではないだろうか.
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