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Ⅰ.はじめに
先日,筆者のところの超短波治療器が故障したのでメーカーから修理に来て頂いた.裏蓋を外すのを肩越しに眺めていた筆者は思わず声を上げてしまった.あの大きな真空管が影も形も無かったからである.こう言っても最近教育を受けた理学療法士(以下PTと略)諸氏には何の事かわからないと思うが,昔は,といってもつい最近までは,一升びんほどもありそうな真空管が超短波発振回路の主役であった.移動する際など「真空管が切れるといけないから静かに運べ」などとどなったものである.ところが今は高さ2cm位の水晶発振の部品がその代りをしている.このような変化は何も超短波治療器に限ったことではない.Bobath氏用いるR.I.P.という略語はreflex inhibiting patternの略であるが,筆者が教育を受け頃はreflex inhibiting positionを指した.また,補装具にAFOとかKAOといった呼び方が用いられたり,切断部位をleg partialなどと表現することも最近までは無かったことである.必ずしもこうした呼称をまねる必要は無いが,知らないと外国文献が読めなかったりすることもあるので無視するわけにもいかない.また,新しい事実でもないのに勉強していなかったために知らないという場合も少なくない.PT実習生に知らない事を質問されて困った経験は多くの方がお持ちと思う.そしてさらに悲しいことには,知らないと思って参考書を開くと,ちゃんとその箇所にアンダーラインが引いてあり,おまけに自分の字で書き込みまでしてあったという場合もある.有名なエビングハウスの忘却曲線によれば,20分後には覚えた事の1/2近くを忘れ,1日後には2/3も忘れてしまうのであるから不思議な事ではないのかも知れないが.
このように,我々は日常業務の範囲ですら知っているべき事柄を知らなかったり忘れたりしている事が少なくない.我々は患者に対して最高のケアーを提供する義務と,最大の治療効果を追求する責任がある.また,日常行っている評価は,患者の状態を把握しその変化を知ると同時に,PTの治療方針や方法が適切であったか否かを判断するためのものである.そして,常に最良の治療を行うための努力の過程が卒後教育または生涯教育といわれるものではないだろうか.プロフェッショナルである我々は,何らかの形で自分の教育を続けなくてはならないのであるが,何をどこでどのように行ったら良いのだろうか.卒後教育および生涯教育の周辺を検討しながらこの事を考えることが本稿のテーマである.
さて先頃,卒後教育・生涯教育に関する簡単なアンケート調査を行ったので,その結果を紹介しながら話を進めていく(表1).対象は,いわゆる一般リハビリテーション施設・大学病院またはそれに準ずる計6施設に勤務するPTで,3名を除く35名から回答を頂いた.男性32名,女性3名,年齢21~45歳(平均29.3歳),免許取得後の期間は8ヵ月~13年8力月(平均5年1ヵ月)であった.なお,一部を除いて全て記述式の調査であり,したがって項目別の集計は著者が内容を判断して分類したものである.また同一人が2つ以上の回答をしているので総数は35より多い.
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