特集 教育
養成校における教育に関する要望―臨床実習スーパーバイザーの立場より
原 和子
1
1神奈川県総合リハビリテーションセンター
pp.252-253
発行日 1980年4月15日
Published Date 1980/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102128
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Ⅰ.はじめに
1960年代,中央教育審議会の答申は,良く働く人間への「期待される人間像」であった.しかし高度経済成長によっておきた専門知識の分化は,教育のマスプロ化,人間性喪失を,学歴偏重は,中,初等教育において特に詰めこみ,受験科目の強化,コンピューターによる○×式テスト教育を招いた.これらは,創造性や情緒性の涵養,いわゆる大学令で言う人格の陶冶を犠牲にしたものであって,それへの内部からの改革への動きが種々の紛争としてあらわれ,その後の無気力,無関心,無責任の風潮を生んだ.学ぶ側における問題も,貧困による教育の機会を失うことよりも,自殺,暴力,登校拒否といった生きることへの消極性へと移ってきている.
こういった保護過剩,期待過剩の非教育性,例えばしめつけへの反省が,今日「ゆとりあるカリキュラム」と言う中教審答申に現われている.
このように,教育観とか人間像は歴史の変遷と共に変化している.専門的学問や科学と言う言葉の裏には不変の真理があるという前提に立つにもかかわらず,教育学や心理学等を基礎とした作業療法学としての人間学の座標の何と移ろいやすいことか.
今日の一般教育からの延長として養成校を眺め,さらに多様的な臨床の場から,教育をその原点と方向を求めて一考してみたい.
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