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はじめに
筋力をはじめとして,筋の運動能(muscular performance)を向上させる日的として,今日まで多種の運動療法機器が紹介されてきた.しかもそのほとんどが,抵抗運動が行えるように設計工夫されたものであり,いかにリハビリテーション医学の分野で筋力の増強に大きな関心が注がれ,かつ重要な治療の目的の一つになっているかが理解できる.1960年代の後半までは,筋力増強を目的とした抵抗訓練には,等張性筋収縮訓練註1)(Isotonic Exercise)と等尺性筋収縮訓練(Isometric Exercise)の2つが主流を占める考えであった.筋収縮の結果生ずる関節運動は,骨―関節より成る一つのテコ系(lever system)の原理に従っていると考えられる.等張性筋収縮訓練では,この身体テコ系に対して,一定の負荷(抵抗)が全関節可動域を通してかかってくるが,反面肝心の筋に対しては,関節可動域の変化とともに負荷が変化する.また筋の収縮効率がこの負荷の変化に対応せず,筋力増強に不可欠な筋の最大緊張を効果的に得られないのが欠点となっている1~3).しかも等張性収縮では,筋の収縮速度が関節可動域の一点一点ですべて変化しているため,仮りに等張性収縮による筋の収縮曲線が得られたとしても任意の関節角度に対応する筋トルク(muscular torque)の算出は不可能といわねばならない4).一方これに対して等尺性筋収縮訓練では,筋の最大緊張を得るという点では,筋力増強に最適であるとは考えられるが,反面筋の収縮速度がゼロすなわち関節運動が起こらないため,患者にとって運動感覚やパターンの習得で不都合な点も多い1,5).これら2つの筋収縮訓練法の利点,欠点を考え,新しく抵抗訓練の第3の概念として登場したのがMoffroid6,7)らの紹介による等運動性訓練(Isokinetic Exercise)註2)である.この方法は,前二者の筋収縮訓練が,筋への負荷や筋収縮距離をコントロールしていたのに対し,筋収縮のスピードすなわち運動の速さを一定にコントロールしようという点で大きく異っている(図1).またこの新しい筋収縮法の出現により,今まで算出の難しかった筋トルクがあらゆる任意の関節角度に応じて得られるようになり,筋力をはじめとして,筋収縮効率や筋の仕事能などの基本的運動能力の変数(parameter)を把握できるようになった.この事は筋の数量的評価という面で大きな進歩であろう.等運動性収縮は自然に得ることが不可能であるため,特殊な機器を用いなければならない.この機器は,1965年頃J. Perrineにより設計され,N.Y.U.のLowmanら2,3)による臨床的実用性の証明後,米国のLumex社よりCybex machineとして市販されるようになった註3).我が国へは,1970年代に入って大井・御巫8,9)らにより紹介され,その後ほぼ10年の間に機器も改良され,いまや全国各地の主要な施設で使用されるようになってきた.
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