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Ⅰ.はじめに
脳性麻痺(以下CPと呼称)の早期治療について,いつから治療を開始するのが早期治療に入るのかという時期的な定義は確定していない.CP治療の大きな部分を占めているいろいろな運動療法の手技によっても,子供がどのような状態でいつから訓練を開始するのが早期治療なのかというのは,いろいろ見解の分かれるところである.生下時あるいは,新生児期に明らかに,脳性運動障害と診断がつくような重症のCPは別にして,症候性危険児,中枢性協調障害と言われる段階で,訓練治療を開始するのが,“脳性麻痺”の早期治療に対する基本的な考え方である.換言すれば,CPおよびその病型の診断が確定する以前に,CPの運動症候群に見られる異常な運動パターンの出現を阻止し,できるだけ正常運動発達に即した生理的な筋活動を獲得させることが,早期治療であると言える.
リハビリテーションの立場から,障害児・者の治療には,個人の全人格を包括したあらゆる分野からのアプローチが必要であることは言うまでもない.発育過程にある乳児の運動障害であるCPにおいても,療育という意味からいろいろな分野からのアプローチが必要である.しかし,乳児の運動障害の治療において,療育という抽象論ではなくて,具体的にどのように患児にアプローチすべきかが,実際の治療に携わるセラピストと両親にとっては重要な問題である.ほとんどのCPは運動障害だけでなく,いろいろな複合障害を合併している.そのために,子供の障害に応じてPT,OT,ST,心理療法士,小児科,眼科,耳鼻科,整形外科医等が関与すべきことも言うまでもない.実際の訓練治療においては,PT,OT,STがそれぞれの専門的立場から患児を取り扱っている.
PT,OT,STという職種の分類は,もともと成人のリハビリテーションに必要な訓練治療の内容から生まれてきたものと考えられる.したがって,移動運動(locomotion),上肢機能,言語が完成し,社会生活を営んでいた成人の後天的な機能障害に対する訓練治療体系が,発育過程にある乳幼児の訓練治療に,直接適用できるかどうかを考慮しなければならない.すべての身体の発育が未熟で,機能的に未分化な乳児を対象にする場合,対処する側も,患児の状態に即した対処の仕方を考えなければならない.
上述したことを考慮しながら,運動療法として,Vojtaのfacilitation techniqueによって早期訓練治療された乳児の治療成績について述べてみたい.
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