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はじめに
最近の研究によれば染色体異常の頻度は,非常に高く,比較的大きな染色体異常だけを数えても出産児の1%にも上ると言われる.その中でもDown症候群は,約600人に1人の発生頻度を示し,染色体異常の中でもその占める割合は大きい.Down症候群の身体的特色の一つとして低筋緊張が挙げられる.中でも骨盤帯以下下肢の低筋緊張が著明であり,異常に大きな四肢の関節可動性の為,運動発達段階にある患児の動作はやや特徴的といえるパターンを認め得る.また身体的特色に加えて,精神発達遅滞,言語遅滞の為患児をとりまく生活環境への適応が遅れたり,情緒的,教育的発達にも遅延を来すことが多いと言われる.Down症候群児は,CP児と異なり,中枢神経障害に基づく運動発達障害とは根本的に異なる.すなわちDownの脳は未成熟(hypoplastisch)ではあるが正常の運動発達に必要な諸種の姿勢反射統合中枢は適切な機能を営むだけの潜在能力を有していると考えられ,適切な外的刺激を与えれば,これらの反射機能を賦活することは,CP児よりかえって容易かもしれない.ただ低筋緊張という状態が,患児の運動発達を促す姿勢反射活動の刺激因子となり難く,これに加えて精薄や言語障害が外界からの小児の精神運動発達に必要な諸種の刺激入力(Stimulous input)を歪曲,阻害する可能性が多分に多い為,ともすれば正常の連動及び精神的発達に高度の遅帯を招く危険性が高いということになるだろう.従って適切な療育訓練を早期から開始すれば,少しでも上述の問題点に対処でき,Down症児をできるだけ早く正常児の精神連動発達過程圏内に近づけることが可能になると考えられる.そこでこの報告では,南小倉病院外来で1年にわたって指導観察できたDown症児1例の機能回復訓練を通して,患児の身体的及び言語,社会的発達について感じた点,問題点などを理学療法士,作業法士の立場から考え,今後の治療の反省材料としたい.
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