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講座
失行症・失認症Ⅲ 失行症・失認症の分類,症候論,診断,総論
Classification, Symptomatology and Diagnosis of Apraxia and Agnosia
上田 敏
1
Satoshi UEDA
1
1東京大学附属病院
1The University of Tokyo.
pp.425-430
発行日 1979年6月15日
Published Date 1979/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101930
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Ⅲ.失行症・失認症の分類
失行症・矢認症の分類には種々の立場がある.もっとも古くから行われているのは記述的な立場からの分類である.これは個々の患者の示す症状(行為・認識の何らかの異常)をよく観察・記載し,それを他の多数の症例と比較し,症状の共通点を抜き出すとともに,一見類似しているが実は本質的な点で異っていると考えられる他の諸症状との相違点をも明らかにし,「~失行」,「~失認」などの概念を確立する(「単位症状」の決定)ことから出発し,ついでそれらの各種の失行・失認症状を何らかの分類原理によって整理し体系化していくものである.これは臨床医学としての失行・失認研究の正統的な方法であり,特にその前半の「単位症状」の確立に到る手続きは,失行症・失認症の研究がたえずそこに立戻って再出発をしなければならないほどの重要性を持っている.
しかしこのような記述的な立場にもいくつかの制約がある.それはまず,種々の研究者による「単位症状」の規定のしかた(概念の定め方)に深浅,広狭のさまざまの差があり,しばしば相互にオーバーラップしたり,同じ現象を僅かに異った角度から規定しただけで一見全く異った症状であるかのように見えたりしていることである.その結果,帰納的な分類に到達するための根本的な出発点であるはずの「単位症状」がその「単位性」(それ以上分けられない最終的なものかどうか)について不確実であったり不揃いであったりすることが起りがちである.
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