1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?
「失行・失認」
能登 真一
1
1新潟医療福祉大学
pp.321
発行日 2007年4月15日
Published Date 2007/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100337
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「失行(apraxia)」の命名は,1900年にLiepmannが運動の可能な身体肢節を一定の目的に従って動かすことの障害と定義したことが始まりである.一方,「失認(agnosia)」の用語自体は,1891年にFreudが感覚機能自体の障害がなく,しかも対象の意味を把握することの障害として定義していたが,「失行」の登場以来,対象の認識障害には「失認」を,行為の障害には「失行」をとはっきり区別されるようになったといわれている1).現在,定義されている「失行」と「失認」の主なものを表に示す.
「失行」は運動麻痺や感覚障害など他の原因によらない随意的な行為の障害である.随意的な行為の障害が起こる部位は,上肢をはじめ口腔や顔面にまで及ぶが,人間の発達過程における「道具の使用」という概念を重要視すると,それはほとんどの場合上肢を使って行うため,失行も上肢に限って捉えたほうが理解しやすい.実際に海外の論文などでは,limb apraxiaという用語で四肢(上肢)の失行として総称されることが多くなっている2).観念失行はその道具を使用する際の障害であり,日常生活に直接影響を及ぼす.ハサミや歯ブラシなど日用道具の使い方を誤ったり,お茶を入れるなどの系列的な動作でその順序を誤る.また,観念運動失行では道具を使用する真似(パントマイム)や,おいでおいで,バイバイなどの社会的習慣動作に障害を来す.これら各種失行の命名や定義については,Liepmannの報告以後1世紀余を経てもなお混乱している3).各臨床家におかれては,失行を述べる際に用語の用い方を明確にしておくことが重要である.
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