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Ⅰ.はじめに
脳性麻痺の早期療育が叫ばれ,その成果が報告されて来ている.脳性麻痺の療育を行う際,以前はその本体である脳損傷が多彩な臨床像を示すことから全人的アプローチが必要とされて来た.一方,早期療育,特に零歳児の療育を行うためには,その能力が未分化であること,健康維持に多くの困難性があることのために,生命保持機能に関連したより一層基本的能力についての全人的アプローチが必要とされる.たとえば,哺乳困難に対して適当な処置がなされなければ,栄養不良となり運動機能に関するアプローチはもとより不可能である.喘鳴がひどく呼吸の下手な児は気道感染を起しやすく,これも運動機能に対して治療プログラムをたてられないことになる.さらに最近報告1)されているように,保育器の中から治療を行うといった例には,これが象徴的に現れており,生命の問題が第一義的に考えられなければならないのはいうまでもない.
これに対して,運動機能に対してのアプローチを専門とする職種(整形外科医・理学療法士・作業療法士等)の間では,ややもすると運動機能にばかり目を向け,それに対し治療を行うことが,脳損傷に対する治療であると考え勝ちである.テクニックの修得こそが第一に重要といった風潮が見られるが,これは筆者にも幾分の責任のある所であるが,厳に戒めなければならない.我々はより基本的な意味での全人的アプローチの中に運動機能に対するアプローチを位置付けて運動機能に問題のある児に接して行かねばならない.
この小論では,特に脳損傷または発達障害をもつ乳児に対する神経生理学的方法に関して私見を中心にして述べる.まず発達途上にある乳児をどのようにとらえて運動機能を促進させたらよいかを述べ,続いてそれぞれの問題に関して手技はどのように考えて施行するべきかを概論的に述べる.
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