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はじめに
脳性麻痺(以下,CPと略す)の本体は新生児期,またはそれ以前に起った非進行性の脳損傷であり,その一表現形として運動ならびに姿勢の異常が出現することがある.これが脳性麻痺の定義とされている(1968年厚生省脳性麻痺研究班)1).CPの(超)早期療育を行う場合,便宜的にその段階分けを3段階にすると理解しやすい.すなわち,①周産(生)期・新生児期に危険因子があり,脳損傷の存在が疑われる段階,②精神・運動発達遅滞,原始反射の存続,異常姿勢反射が存在し,脳損傷の存在は確実であるが,将来の病像が不明確な段階,③日常生活において異常姿勢・運動が明確でCPと確定診断できる段階である.最近,Vojtaの述べているように,①は危険児,②は脳性運動障害,そして③をCPと呼ぶことが多く見られるようになってきた.①の危険児の中で,Vojta2)の述べる7種の姿勢反射に異常応答の存在する場合は中枢性協調障害と呼ぶことがある.この段階分けは月齢により一線を画することはできないが,それは重度の脳損傷ほど症状が早期に明確になるためである.それ故,(超)早期療育という時は,月齢で何ヵ月までと決めることは困難で,上記①②の段階で療育を開始した場合,(超)早期療育と考えるのがよいと筆者は考えている.また,あえて超早期と超の字をつける意味は近年見いだせないので(超)とし,省略の方向に進みたい意向を示した.
この時期では,これらの児が将来CPになるか,その他知恵遅れ(Mental Retardation,MRと略す),てんかん(Epilepsy,Epiと略す),行動異常になるかは100%予測することはできない.それ故,CPの療育を念頭におきつつも(超)早期療育の対象は決してCPだけでなく,MR,Epiそしていわゆる重症心身障害も含まれるのである.さらに育て方の欠陥による単なる発達遅滞児(=正常児)も対象とすることがしばしばある.
この小論では,まずわれわれの施設における脳損傷児に対する(超)早期療育の現状を紹介し,続いて療育上問題となる合併症についての医療の必要度につき分析したものを述べる.
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