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はじめに
脳性マヒの運動機能障害が,機能訓練により改善させうることが明らかにされたのは,1920年代,アメリカのDr. Phelps,わが国の高木憲次博士らの先駆的業績によるところが大きい.
当時,すでにできるだけ早期の治療開始が必要であると強調されていたが,他動運動から自動運動,抵抗運動へと正常児の発達段階にそって,訓練をすすめていくPhelpsのテクニックの実施にあたっては,患者の協力が必要であり,‘早期’治療にもおのずから年齢的限界があった.
昭和30年より,整肢療護園では,学齢前の幼児を対象とした,母子入園訓練室を設けたが,当初訓練の効果があるのは,意欲が十分にあり,知能があまり遅れていない子どもであると考え,したがって年齢の下限は満3歳ごろにおかれていた.
しかし,昭和40年ごろよりBobath夫妻により提唱された原始姿勢反射の抑制による異常な筋緊張の正常化,より正常な運動パターンのひき出し,平衡反応の発達の促進などのテクニックが,わが国にも導入され,従来ばく然と学齢前の幼児に対し,早期治療といわれていたのが,出生時より1歳-1歳半までの乳幼児に対する‘Veryearly treatment’1,2)が広く行なわれるようになり,現在,‘早期’治療というのは後者をさすのが一般通念となっている.
更に,脳性マヒにおける感覚・知覚の障害,心理的問題にも関心が高まり,運動機能訓練中心であったリハビリテーションのプログラムも,1人の子どもとして,脳性マヒ児の全体としての発達を考えずに実施することは,適当ではなく,全国各地に保育部門を十分取り入れた,母子通園センターが開設され,積極的なリハビリテーションが進められるようになった.
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