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1.はじめに
昨年の第15回日本リハビリテーション医学会総会(別府)のシンポジウムに「ファシリテーション・テクニックの再検討―その効果と適応」が企画され,木村会長の委嘱によって筆者が司会をつとめ,中村,大川,穐山,佐竹の諸氏の発表を基に討論が行われた1).この日の討論は対象を成人片麻痺と脳性麻痺との二大疾患にしぼった.しかしそれにしても非常に大きなテーマであったため,時間の制約も大きく,徹底した討論によって一定のコンセンサスが生まれるというところまではいかず,演者,発言者がそれぞれ自己の見解を述べるに留まった感もあった.しかしこのようなシンポジウムが学会の場でもたれたこと自体が,この問題に関する関心の大きさを示しており,またこの討論を通じての最小限の共通認識として,現在諸派に分かれているファシリテーション・テクニックの諸体系の統合化の必要と,その第一歩として,まず主要な疾患,たとえば成人片麻痺と脳性麻痺に関し,疾患別の統合を行っていくことの必要性が暗黙のうちに確認されたように少なくも筆者には感じとられた.これはひとつの大きな成果であったと言ってよいであろう.
今回の本誌の特集は,2号にわたってこの問題をとりあげ,前半では主に成人片麻痺を,後半では脳性麻痺をとりあげるが,その趣旨もまた,このような方向にむけてさらに具体的に何歩かの前進を実現したいと願ってのものである.そのためあえてBrunnstrom法,Bobath法,Vojta法などの技法別の分け方を避け,対象別(成人片麻痺と脳性麻痺)にとりあげて,それぞれの筆者になるべく自分自身の考え方と実際行っている治療について「なぜそれを行っているか」を中心に書いていただきたいという難かしい注文をさせていただいた.
筆者は以前からファシリテーション・テクニックに深い興味をいだき,10年前(1968~69)に本誌にかなり詳細な紹介を行い,その後もいくつかの論文でこれを論じてきた.特に比較的最近の論文2)では,その理論的基礎の考察から,統合にあたっての原則や,いくつかの技法の間の具体的な統合の道筋について詳しく私見を述べた.今回特集の序論として「ファシリテーション・テクニックの統合をめざして」と題して,現在の問題点を論ずるにあたり,なるべくこれらの論文との重複を避けて,特に重要と思われる二,三の点に限ったので,その他の点については是非前論文2)を御参照いただきたい.また,文献も前論文2)またはそれ以前の論文に掲げたものは一切省いたのでそれらを参照されたい.
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