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Ⅰ.はしがき
第2次大戦以前における義肢・装具の研究開発は,世界各国とも多少の差はあれ,いずれも軍隊を中心として,外科医(特に整形外科医)と義肢職人との協力によってなされてきた.しかも,その機構や構造に関する研究のアイデアについていえば,外科医のすぐれた着想と義肢職人の精巧な技術とにより,現時点でみても,感心するほど出つくしているといっても過言ではない.
このことは,武智らの著書1,2)に詳しく述べられているように,義肢・装具の歴史が紀元前数世紀にさかのぼることからも理解されよう.
しかし,弟2次世界大戦による戦傷者数は,兵器の画期的進歩により,単に軍人にのみらず,民間人にもその被害が及んで,膨大な数となったことと,リハビリテーションに始まる福祉思想の抬頭とにより,ハンディキャップを埋めるための義肢・装具に対する要求も変容しはじめた.従来の義肢・装具は,どちらかといえば,形態的な補綴を主とし,機能的な補綴にまでは考慮が及んでいなかった.いわば,静力学的配慮があれば,一応その役割を果したと考えられてきたのに対し,動力学的機能を問題とするようになってきたのである.
これと同時に,工学者からのアプローチも行なわれるようになってきたため,義肢・装具の開発に対し,システム的なチーム・アプローチの必要性が生じてきた.そのため,欧米各国では,医学と工学の共同研究体勢が続続と建設されるようになった.
ところが,わが国においては,大戦の終了に伴い,軍隊が解体されると共に,義肢・装具の研究開発システムも消えて20年程度は,ブランクのままに放置されてしまった.従って,欧米との格差は極めて大きくなり,整形外科やリハビリテーション医学の進歩からもとり残され,極めて低いレベルのまま今日に至っていることは痛痕の極みである.本稿においては,欧米諸国における義肢・装具研究脂発システムと,わが国のそれとを諸種の観点から比較し,今後のシステムのあり方を検討してみたい.
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