The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 11, Issue 2
(February 1977)
Japanese
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1.はじめに
骨格型義肢という語が斯界に登場してすでに数年以上経過している.それにもかかわらず,この語の定義は意外にもあいまいなまま現在に至っている.そのため討論の場台に種々の混乱が発生している.展望について論ずる前に言葉の概念を明確にしておきたい.
“骨格型義肢”というのは,均質な材料を用いて全体を形成している“非骨格型義肢”に対応するものである.すなわち,外力という荷重を義肢全体で分担しないで,荷重を分担する部分と,荷重を分担しない部分とによって構成される義肢の総称である.
人体のように中心に骨格があり,その周囲を筋肉,皮病といった非構造材料で構成されたものを“内骨格構造”と称する.これに対し,エビやカニのように外側に硬い外殼をもち,内部に筋肉や神経などが包みこまれている構造の場合には,これを“外骨格型構造”という.
この概念に従って分類すると
骨格型義肢〈内骨格型義肢,外骨格型義肢〉
とが存在することになる.現在使われている義肢はほとんど骨格型義肢の範疇からははみ出していない.
一方,構造上の分類として,全く別の立場がある.それはi)一体構造型義肢とii)モジュラ義肢である.一休構造義肢は1つの素材を加工して1本の義肢を作り上げる形式であり,モジュラ義肢とはいくつかの機能部品を組み合わせて組み立て加工することを主体とした形式である.この意味からいえば,現在の木製義肢のほとんどは,ソケット,藤,足部の機能部品をそれぞれ作り組み立ててアライメソトを調整して仕上げ加工がなされているから,これも立派なモジュラ義肢に属する.
してみると,モジュラ義肢は是か非かという議論自体が何を論じているのかわからなくなってしまうのである.
現在,本特集で問題になっているのは,実は従来の外骨格型木製半モジュラ義肢と比較して,新しく市場に出現した内骨格型金属製モジュラ義肢の将来を論ずることであろう.
義肢というものは,そのハードウェアのもつ機能のみで優劣が判定されるものでないことは読者諸賢は十分ご承知のことと考える.すなわち,切断者を中心として,医師,リハビリテーションチーム及び義肢製作技術者の総合的技術の集積努力によって始めて義肢の機能が発揮できるものである.
したがって,両義肢の優劣を比較しようとするならば,たとえば義足に関しては,股関節離断,大腿短断端,同中断端,同長断端,膝関節離断,下腿壇断端,同中断端,同長断端,サイム等の特定切断者群を決定し,一定のリハビリテーションチーム(医師及び義肢製作技術者を含む)群を定め,それぞれのチームが上述の2種の義足を採型,製作,調整し,訓練後に総合的に比較した結果を論じなければ公正な判断はできないのである.
残念なことに,わが国においては,まだこのような統計的,客観的な評価のできるシステムが存在してない.そのため,学会発表をみても,ある研究者がある特定の義肢に注目して,ある製作技術者につくらせた義肢をある切断者に装着させ,あるリハチームで訓練したところ,極めてうまく社会復帰できた.それ故にこの義肢は優秀な義肢であるという,きわめて主観的なものが多くなってしまう.筆者は数年来,こうした客観的評価のできるシステムの確立を提唱してきたが,なかなか実現が困難である.
こうした背景を基にして両者の優劣を比較することで本稿の責を果したいと考える.
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