Japanese
English
展望
痛みに対する温熱療法―その現状と問題点
Therapeutic Heat, Its Effect and Problems
嶋田 智明
1
Tomoaki SHIMADA
1
1九州リハビリテーション大学校
pp.381-387
発行日 1977年5月15日
Published Date 1977/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101480
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はじめに
痛みは人体にとって危害侵襲を知らせる有益な警報であると同時に耐え難い苦痛の一つである.身体に外傷をはじめとして,多くの刺激因子が疼痛反応を生じれば,筋スパズムとの間に頑固な連結を作るようになる.スパズムは浮腫や炎症状態などと複雑にからみ合い増悪化し,ついには線維化反応を来し,結果として筋の伸展性の減少,関節可動性の制限筋,膜の短縮化を招来し,身体機能の障害を起こすこととなる1).このように考えれば,痛みは運動機能障害の治療的アプローチの過程で先ず対処すべき重要な意味を有している「課題」といえよう.現学療法の治療序列は,疼痛の軽減除去,ROM維持増大,筋力維持増強とすすみ,最終的に機能統合の段階へと至るようにアプローチされる19).しかしそれぞれの治療アプローチは,決して個々独立したものでなく,むしろ互いに重なり合っている面が多く,それ単独では十分な治療効果をあげることは難しい.特に温熱療法は身体機能の障害に対するアプローチの最初の「壁」である痛みや筋スパズムを軽減・除去することが目的であり,しかもこれは温熱療法に次いで行なわれる適切な治療訓練があってこそ,機能回復という「成果」が得られるのであり,はじめて有意義なものになるといえる.
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