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はじめに
日本における義手の支給状況を見た場合,全国の代表的な義肢装具製作所を対象に1年間に製作された義手の数を調べた中島らの報告1)によると,1986年と1996年のそれぞれ1年間で,装飾義手が全体の9割近くを占めていた.すなわち上肢切断者のほとんどは,その失われた機能を補充されないままであると言える.
作業性に優れた義手と言えば,従来から現在に至るまで日本では能動フック型義手が主流であると考えられるが,その見た目の悪さのために,上肢切断者がやむなく装飾義手を希望した場合も少なくないであろう.したがって,装飾性を重視しつつ,ある程度の作業性を備えた動力義手(本稿では筋電義手)が日本の上肢切断者の現状に合致しているのではないだろうか.
しかしながら,日本における筋電義手の普及は欧米諸国に比べて著しい遅れをとっている.川村らの報告によれば2,3),片側前腕切断者に対する義手のなかでの筋電義手の割合は,アメリカで25~40%,ドイツでは70%,イタリアで16%であるという.川村らが近畿地区で行った上肢切断者のアンケート調査では4),筋電義手使用者はわずか2%であった.中島らの報告によると1),公的給付制度による筋電義手の支給は,1986年に1本,1996年に8本であった.青山ら5)が1979年から1994年の16年間における筋電義手の国内販売総数を調べたところ,その数は349本であり,販売数は以後滅少傾向にあるという.
このように筋電義手の普及が日本において遅れた主要な原因の一つは,筋電義手に精通した医療スタッフの数が全国的にきわめて少なく,なおかつ筋電義手装着訓練と適正評価を行える体制が全国の主要な大学やリハビリテーションセンターで整備されていないことにあると考えられる.
当センターでは,平成11年より臨床現場において,主として前腕切断者に対して,筋電義手装着訓練と適正評価が日常的に実施できる体制(訓練用筋電義手システム)を確立した.本訓査の目的は,当センターの訓練用筋電義手システムを紹介するとともに,従来の訓練用仮義手システムと,1)義手製作と訓練期間,2)義手製作費用とメンテナンス,3)筋電義手支給のための公的支援制度の比較を行い,その問題点について検討することである.
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