特集 脳卒中のリハビリテーション
Ⅶ 外科的治療
片まひにおけるフェノールブロック
高浜 晶彦
1
,
原 武郎
1
1九州労災病院リハビリテーション診療科
pp.550-558
発行日 1971年11月9日
Published Date 1971/11/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100523
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はじめに
脳血管障害は,最近その頻度を増し,青壮年層にまで波及しつつあり,その後遺症のなかでも,片まひは最も代表的な疾患である.片まひは錐体路が,脳のレベルで一側性に障害されて起こる症候群で,痙性片まひ,腱反射の亢進,Babinski反射陽性などの徴候がみられる.特に内包後脚後部の障害が,最も高率に発生し1),定型的な痙性片まひとなり,その運動障害は,治りにくいとされている2).一般に片まひでは,下肢よりも上肢に障害が強く,また躯幹近位部よりも末梢にその程度は強く,ことに手指の巧緻運動が著明に侵される.下肢や上肢の躯幹近位部においては,両側性支配が強いため,代償機能の誘発と助長による効果が大いに期待されるが,手指では対側性支配が確立されているため,その機能の回復を望みえないことが多い.特に下肢の痙性は,移動・姿勢の保持など,日常生活動作と関係が深く,リハビリテーション治療の面において,大きな障害となる.
痙性は,γ細胞よりのインパルスが増加したために,筋紡錘発射が盛んとなり,Ia群線維を介して,α細胞の活動が刺激される結果,伸張反射が亢進するとされている3)(図1).このγサイクルの悪循環を遮断し,痙縮をコントロールする種々の方法が試みられてきた4-8).Khalili9)の末梢神経に対する低濃度フェノール溶液による,選択的ブロック法に始まる多くの報告は,手技の簡便さ,知覚および随意運動にほとんど障害を認めないことなど,種々の利点が報告されている.
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