- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
ひとことに片まひといっても,そのおかされた脳の部位・程度により,運動および感覚まひ,運動失調,失語・失行・失認,感情・知能の障害など,さまざまな障害をもっていることが多い.それらの障害により,日常生活,職業などその人の生活全般が影響を受けている.私たちは,ここでは機能訓練にスポットをあてて,私たちの病院での経験をまとめてみたい.
私たちは,大学病院というおもに急性期の患者を対象とする一般病院にいる.リハビリテーション部には病院中の各科を通して患者が来るが,リハビリテーション専用のベッドがないために,訓練途中で退院をしなければならない患者が多い.したがって比較的短期間で,他の病院施設へ転院する患者が多い.一方,地方のリハビリテーション専門病院を退院後,外来通院して来る患者もいる.要するに発病後数週間から2-3年を経過した古い患者まで,広範囲に扱っている.治療頻度は,訓練の必要度に応じて,週2-6回,また,外来で仕事をしていたり,通院が本人家族に負担になり困難な場合は,月1回,あるいは2週間に1回くらいの割合で通院させ,家庭訓練プログラムを指導している.治療時間は,1時間単位だが,職場復帰前の患者では,1日6時間くらいやる例もある.
要するに,さまざまの障害程度・タイプの患者を,発病後いろいろな時期に,いろいろな期間,取り扱っていて,その回復の程度もさまざまである.私たちとしては,評価をして,何がどの程度できなくなっているかをとらえ,それら1つ1つを患者の生活上のニードと照らし合わせて,治療プログラムを立て訓練する.
私たちの経験では,かなり長期間にわたって訓練を続けて,進歩が得られなくなると,患者もその状態で,家庭生活,または職業生活へもどる気になるようである.私たちの病院の大きな利点は,市中にあるため,地域病院として外来患者の社会復帰を,ダイナミックに推進できる可能性が大きいことである.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.