特集 脳卒中のリハビリテーション
Ⅳ 理学療法
片まひにおける異常歩行の矯正
渡辺 洋
1
1伊豆韮山温泉病院
pp.488-493
発行日 1971年11月9日
Published Date 1971/11/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100509
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序論
片まひの異常歩行の出現には,共同運動および痙性が関与していることは,周知の事実である.それは中枢神経系―現代の医療技術でも補修できない―の損傷により,筋の正常なphasic patternの乱れが生じ,それらが歩行の生体力学的な乱れを促す.これらの乱れは,身体全体の感覚のおよび感覚に対する反応の異常により誘発され,強化されるのである.またそれらの乱れに加わって,乱れを修正しようとする代償的運動が出現し,異常歩行時の全体像が形成される.したがって,異常歩行は多様性を増し,注意して観察すると百人百態である.しかし,各人の間には一定の法則性が貫かれており,歩行の異常性の客観的把握が必要である.
特に片まひの歩行の再教育には,筋のphasic patternと生体力学との関係をどのように扱い,患者の能力の範囲がどの程度得られるか,を判断できる資料が必要であり,今後の理学療法の指針となる.ただし,現段階では定性的な判定がなされており,ある程度客観性を有しており,臨床的に有効と考えられる.特に,視覚的に生体力学的推論の重要性が,認識されてきている.そこでこの論文では,歩行に対する検査,および再教育の原則について臨床をとうして論じようと思う.
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