- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
日本においても新しく理学療法士が誕生して,その業務内容も今まで主として取扱われてきた四肢を中心とする身体障害の治療にとどまらず,他の機能障害の予防・治療にも広がってきた。その一つに呼吸機能障害に対する理学療法がある。これはわが国でもそう新しいものでなく,過去数年主として呼吸器疾患を取扱う病院で行なわれていたが,呼吸障害は何も呼吸器に関するものだけでなく,他の原因によっても起こりうるし,また呼吸器に疾患がある患者の治療として行なうだけでなく,その発生予防を広い視野に立ってどこででも要に応じて行なわねばならない。欧米各国,特に英国およびその連邦国における理学療法士のこの分野での活躍はすばらしい。内科的な呼吸器疾患にかぎらず,あらゆる手術の後の呼吸管理に大きな役割をはたしている。すなわち呼吸器疾患の病棟のみならず,外科の病棟で,また特に呼吸管理を必要とする患者を集めたIntensive Care Unit(集中看護病室)またはRespiratory Unit(呼吸管理病室)での理学療法士の仕事は大切で,これらの特殊病室には必ず理学療法士が要員として加わっている。このためよく理学療法士には夜勤がないから楽だなどといわれるがとんでもない話で,夜勤を組んでいる病院もあるし,また電話で救急例について呼出される時もある。また最近出版されたベネディクセン著の「呼吸管理」にもかなりのスペースをさいて理学療法の項がある。これは呼吸の管理にいかに理学療法が大切であるかを物語っている。
先に述べたように,呼吸の管理を必要とする患者は呼吸器,主として肺気管支系に変化がある者ばかりでなく,中枢神経性の呼吸障害;睡眠剤中毒や頭部外傷,筋神経系障害によるもの;重症筋無力症・進行性筋萎縮症・破傷風などいろいろあるが,ここでは与えられた標題にしたがって手術後に起こる呼吸障害につきその原因,理学療法士の治療の進め方について述べる。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.