特集 中耳真珠腫最新の知見—病態から治療まで
III.後天性真珠腫・合併症
真珠腫症の合併症と手術時合併症の予防
石井 哲夫
1
,
後藤田 陽子
1
1東京女子医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.923-929
発行日 1987年10月20日
Published Date 1987/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210399
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I.はじめに
真珠腫症の合併症の程度と種類は多様である。最近は一般の人々も医学への関心が高く医療事情も好転したとはいえ,本症の合併症は少なくない。僻地に多いかといえばそうでもなく,大都会にも多い。これは患者自身が本疾患に対する病識が少なく,耳漏などの症状を軽く考えて合併症状が生じるまで放置する場合が多いことによるだろう。これには患者の医者嫌いもあろうが,症状の少ない真珠腫症患者に対して医師も積極的に手術を勧めないことも時にはあるであろう。
鼓膜の陥凹がゾンデで深く探れる例で,耳漏もなく,難聴もなく,重い感じや痛みなどの症状もない真珠腫症は,いきなり手術を勧めても患者はなかなか承諾しない。そのうち真珠腫のサイズが増大し,耳漏を生じ,局所的に炎症が生じると,ますます真珠腫塊の形成は促進される。しかし合併症を起こすまでの期間は症例によって異なり予見できない。ただ真珠腫塊のサイズと頭蓋底や迷路骨包への侵蝕の程度をX線で知り,危険が近づいたことを感知するのがやっとである。
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