目でみる耳鼻咽喉科
先天性中耳真珠腫症例
宮川 辰夫
1
1宮田耳鼻咽喉科医院
pp.766-767
発行日 1987年10月20日
Published Date 1987/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210376
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先天性中耳真珠腫は胎生期に表皮(芽)組織がなんらかの原因で中耳内に残ったものである。起点はisthmusらしい。3,4歳までは無症状でゆっくり成長するので,正常鼓膜の内側にある白色塊が初期発見の決め手になることが多い。内部から発育増大するので,外耳道後壁や上鼓室側壁の破壊が少ないわりに内部の耳小骨連鎖の破壊が高度なことが特徴である。その他,中耳炎の既往歴がない,伝音性難聴がある,真珠腫と鼓膜との接触がない,後部蜂巣の所見が少ない,若年者である,発病までの期間が短い,ことなどが先天性真珠腫の条件とされている。これらの条件ば真珠腫の発育が内から外に向かうのと,外から中に向かうとの違いで説明できる。しかし既報告例には完全な条件を備えたのは少ない。とくに炎症が合併したものは後天性との区別が難しい。自験例7例の先天性真珠腫のうち,鼓膜所見のはっきりした3例を図示する。
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