特集 耳鼻咽喉科MEの進歩
IX.医用材料
修復材料(耳)
中野 雄一
1
Yuichi Nakano
1
1新潟大学医学部耳鼻咽喉科
pp.923-926
発行日 1981年10月20日
Published Date 1981/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209345
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I.はじめに
耳科領域で用いられている人工材料で最もボピュラーなものに,鼓膜挿入チューブがある。いわゆるtympanostomy tube,ventilating tube,draintubeなどと呼ばれているもので,滲出性中耳炎の治療に用いられているが,ventilating tubeと言われるように,これを換気のための代用耳管と解釈すれば,中耳に対する一種の修復材料と言えないこともない。かつどのように使用され工夫されてきたかをみると,耳科領域における人工物の受けとめ方,受け入れ方をかいま見ることができる。
本法は1954年にArmstrong1)により初めて発表されて以来,挿入チューブの材質,形状ならびにそれぞれの臨床効果に対する研究,検討が加えられ,今日におよんでいる。すなわち最初に用いられたのはビニール・チューブであったが,やがてこれはポリエチレン,テフロン,シリコンなどのチューブに代わり,その形状も多種多様なものになった。,しかし結局はどのような型であっても,鼓膜に挿入されたチューブは,いつかは外耳道に排出されるというのが,今日一般的な考え方のようである。やはり異物として受け取られているわけで,もしこれが恒久的に留置されるとなると,逆に合併症の方が心配される。このようなことから,現在はチューブの乱用をいましめる反省期にあるといってもよいが,なおその有用性は広く認められているところである2)。
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