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耳ばかり
K
pp.354
発行日 1953年7月20日
Published Date 1953/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200936
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川柳に「持參金揃つたものは耳ばかり」というのがある。耳より外に人なみの所がない持參金つきの醜婦を詠んだものである。西鶴の一代女にも「然も馬貌にして横へびろがりし面影ひとつひとつ見る程に,耳世間なみにて其の外は皆いやなり」というのも同じことではあるまいか。
(註)耳の觀察は昔の人に缺けて居つた。例えば古い横綱の繪などにも,力士の耳が描寫されていない位だから,人の耳だけは何れも同じ位に考えて居つた粗漏の結果,揃つたものは耳ばかりだと,いつたものである。ところが耳だつて形の完全なものは,あまり多くないようである。
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