特集 耳鼻咽喉科診療の経験と批判
鼓室成形術
設楽 哲也
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.747-752
発行日 1970年10月20日
Published Date 1970/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207528
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Ⅰ.はじめに
第1表は昭和42年9月〜12月の4カ月間に東大本院において施行された耳手術(耳硬化症を除く)の総数と術式の統計を示したものである。現在においてもほぼ同様の比率を示すが,根治手術例はほぼ10%に過ぎない(聴保根治手術などは連鎖を確認し,その状態に沿つて鼓室成形術に加えている)。
現在,鼓室成形術は耳ではもつともありふれた手術となつているが,その手術法の細かい部分に関しては,年々変わつていくように思われる。しかし根本的な伝音理論に進歩がみられるわけではないので,手術法に関する細かい手直しは,
1.炎症に対する取り扱いの問題,特に乳突洞の処理に関して,
2.一つの手術操作が同時にいくつかの要素をからみ合わせているために,その操作の合目的か否かの分析が進んでいないこと,
3.少なくとも瘢痕化が完成した半年後の状態を予想して行なう必要があること,
4.中耳炎の状態が年々変つてきていることなどによつているものと思われる。
きわめて抽象的な問題提起であつたが,以下これらの問題を組み変えて,
1.術中所見,操作から術後半年後の聴力の予想が立つか否か,
2.今後の中耳炎の性格の変貌とその処置,特に癒着症に対する手術,
3.乳突洞の取り扱い方,
の三点につき述べご批判をいただきたい。
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