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Ⅰ.緒言
鼓膜に認むべき所見なく,耳管通気度も良好であるにもかかわらず,高度な非進行性の伝音難聴を主症状とする疾患がある。一側性のことが多い。これは耳小骨連鎖の異常によるもので,原因の明瞭な場合と然らざる場合とがある。頭部外傷による場合は比較的診断が容易である。中耳炎症後の後遺症として,キヌタ骨長脚の消失や,キヌタ・アブミ関節の離断によつて伝音難聴を生ずる場合がある。これは炎症による骨破壊あるいは栄養障害の結果生じたものと考えられる。その他には先天性の耳小骨奇形を挙げることができる。
一般に頭部外傷による難聴は感音難聴のことが多いとされているが,混合難聴や純伝音難聴である場合も決して少なくない。難聴は受傷後意識の回復とともに自覚されるのが普通であるが,本症例は頭部外傷後しばらくして次第に難聴が自覚されたものである。試験的鼓室開放術の結果,アブミ骨骨折が認められた。耳小骨損傷としては稀なものである。
An exploratory tympanotomy on a patient who complained of persistent post-traumatic conductive hearing loss revealed a fracture-dislocation of the stapes. The fractured stapes was found lying on the promontory.
When the fractured stapes was replaced by a piece of the auricular cartilage a remarkable hearing gain was obtained.
The mechanism of stapedial fracture that may be caused by a head injury is discussed.
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