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Ⅰ.緒言
"めまい"という訴えには多様の内容が含まれていることは日常の診療中に経験することであるが,この場合詳しい病歴の聴取は,めまい・平衡障害の他覚的表現としての眼振とその背景としての神経学的所見を理解する上に重要である1)。本来眼振は眼球の平衡障害のあらわれであるとされ,意識下での緩,急両相の形成のもとに見られる眼球リズム運動で,その機能的中心は脳幹部のいわゆる眼球運動系の関与がもつとも考えられ,さらに,この系は上位中枢,小脳および前庭系との密接な関係があることは既に知られている。このような関係から,このいわゆる眼球運動系に種々の障害が起こると,個人差はあるにしても,意識上にそれに応じた訴えがあらわれてくるのは当然で,すでにFrenzel11)(1955)は眩暈分析(Schwindel analyse)を行なつてその分類を試み,鈴木4)(1961)は中枢疾患にみられる自発眼振には眩暈感をほとんど伴わないことからNSD(Nystagmus-Sensation-Dissociation)を提唱して,病巣局在の手段になることを述べた。われわれは昭和42年1月より3カ月間,東大脳研神経内科より送られてきた,めまい・平衡障害症例とこの期間に他科より紹介された症例で実際にわれわれが検査した75症例について,患者自身の訴えを中心として,それにわれわれが日常行なつている神経耳科的検査,神経学的検査を対比させて,めまい・平衡障害患者の特徴について種々検討してみた。はじめに75症例についての統計的観察を試み,ついで,これらの症例から,比較的特徴のある5症例を選んで考察してみた。
A clinical study on vertigo and loss of equilibrium was made in 75 patients with the view of correlating subjective symptoms with objective findings among these patients.
Patients' complaints were divided into 7 clinical types.
Neurological findings were more in accord with the cases who complained of the loss of equilibrium than those of vertigo.
Five typical cases, consisting of Menier's disease, vertebral artery insufficiency, medulloblastoma of vermis, acoustic neurinoma and ocular nystagmus due to head trauma, were selected out the 75 and discussed.
In the vertigo type the causative factor appeared to be mainly due to labyrinthine disorder while a few cases to vertebral artery insufficiency.
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