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特集 こんなときどうする?―耳科手術編
アブミ骨が見つからない!?
Stapes is missing !?
土井 勝美
1
Katsumi Doi
1
1近畿大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.635-638
発行日 2011年8月20日
Published Date 2011/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101930
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Ⅰ.はじめに
中耳手術に際して,アブミ骨が容易にみつからないことはそれほど稀ではない。肉芽組織中や真珠腫母膜中にアブミ骨が埋没して見つからない場合,高度の病変によりアブミ骨の上部構造が融解・消失した場合には,アブミ骨を同定することはしばしば困難となる。前者では,ていねいな病変の剝離・清掃により最終的にはアブミ骨を同定することが可能である。一方で,後者では,鼓索神経,外側半規管隆起と顔面神経管,鼓膜帳筋腱とサジ状突起,アブミ骨筋腱と錐体突起,鼓室岬角や蝸牛窓窩,顔面神経窩や鼓室洞など,中耳内のランドマーク1)を同定しながらアブミ骨底板の確認を行うが,しばしば難渋することになる。
中耳奇形の症例でも,奇形の重症度により,ツチ骨-キヌタ骨関節の離断に加えてアブミ骨の上部構造が欠損している場合,前庭窓が完全に骨性閉鎖している場合など,さまざまなバリエーションが存在し,アブミ骨の探索には苦労する2)。特に,中耳奇形に内耳奇形や外耳奇形を合併している最重症例では,本来ランドマークとなるはずの上述の構造物にも位置異常や形態異常が存在するとアブミ骨の同定はきわめて困難となる。
良好な聴力改善を得るためには,アブミ骨の同定と,その状態に応じた適切な伝音系再建が不可欠である3)。中耳手術に際してアブミ骨が見つからない場合を想定して,そのときの対応と注意点について概説する。
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