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Ⅰ.はしがき
破傷風とは通常汚穢な皮膚の創からClostridium tetaniiが感染することによつて起こる痙攣性疾患であることは周知であるが,かかる症状はすでにHypocratesも記載しているところで古くから知られた恐るべき疾患である。しかしその病因については長い間不知のままに過ぎ,ようやく1884年Nicolaierが鼠,海猽,家兎の体内に土壌を入れることにより人間の破傷風と同様な症状を呈することを実験的に証明し,なおこれで死んだ動物の接種局所から病原菌を発見した。ついで1886年Rosenbachは破傷風患者の局所から同様な菌を見出し,1889年北里氏がこの菌の純培養に成功し,なおこの菌が動物にも破傷風をおこすことを証明し,1890年Behring,北里氏らはその産生する毒素は抗体産生能力があり,この抗体は生体内に遊離している毒素を中和し無毒化することをみとめ,ここに病原および血清治療法も確立されたのである。
当初にも述べたように皮膚からの感染が主体であり,特に地面に近い下肢あるいは上肢の外傷によるものが多いのであるが,上方の頭部・顔面は比較的少なく,特に耳鼻咽喉科領域の粘膜からの感染ははなはだ稀であり,文献を渉猟しても中耳粘膜,鼻・副鼻腔粘膜,口咽喉の粘膜からの感染は推定のものを加えても10指を屈する程度である。
A case of tetanus that showed a diagnostic difficulty due to associated lesions in the gingiva and throat along with paralysis of the recurrent laryngeal nerve is reported. The diagnosis was confirmed only after the manifestation of trismus and signs of gastric spasm.
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