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緒言
耳鼻咽喉科に於て破傷風が問題となることは比較的稀であるが,その初発症状たる咬痙のたあに吾が科を訪ずれることも少くないと考えられる。従つてかかる場合破傷風の経過の悪性であり急激なことを思えば,その診断は重大なる意義がある訳である。
文献上鼻科に於ける報告は極めて稀であるが特に鼻腔異物はその感染源として考えられる所である。即ち1906年Boergerが鼻腔内木片異物より発生した定型的Rose型破傷風を報告し鼻腔粘膜より感染した最初の例として鼻腔異物に対する警告を発しており,1940年Spaethは2歳の子供で鼻内の小石によつて起きたと思われる例を,1950年Linker,Rosenthal,Golombは17ヵ月ネグロの子供で一側鼻孔に入つた紙マツチ軸による破傷風の死亡例を,1952年J. Ferreは3歳半の子供の紙片の鼻腔異物による破傷風の治癒例を1952年Tudorは4歳半の少女で破傷風症状を呈し身体各部に損傷を認めず唯鼻内に多量の膿汁と潰瘍及び布片を見出した例を,1956年Jaromir Lhotak等は11ヵ月の小児の豆の鼻腔異物による破傷風の例を報告している。又Wingatは金属性ボタンの鼻異物除去後その損傷により起きたと思われる破傷風の例をのべ,Mestan K. は1946年上顎洞内に浸入した弾片のため上顎洞に化膿を生じ次いで破傷風の起きた例を述べ,その潜伏期の異常に長かつたことを示している。その他1951年Vilardosaは鼻内手術後に起きた破傷風の例を報告している。
Ohta reports a case of tetanus that appeared to have a nasal lesion as the source and route of infection. Aside from the presence a small area of necrosis in the nasal cavity in a farming girl, aged 17, the examination proved to be negative for presence of lesions and negative of having had one in resent history. The patient made a complete recovery by use of antitetanic vaccine in combination with other symptomatic treatments.
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