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緒言
1929年H. Bergerが始めて人間の脳から出る電気的変化を,頭皮上においた電極によつて記録観察に成功し脳波(E. E. G.)と名付けてから多くの研究者によつて種々の観察が行われて来た。その一部として感覚刺激による脳波の変化も観察と分析が試みられており特に音響刺激に関しては脳波の発見者Berger自身が最初にα波の抑制として発表しているが,続いてH. Davis,P. A. Davis,Marcus,Gibbs & Gibbs(1949)等を始め多数の研究が行われ,本邦においても近年この方面の研究は隆盛となり,たとえば板倉(1957)北尻(1958)等の報告を見る事が出来,また第61回日本耳鼻咽喉科学会の宿題報告者鈴木によりさらに詳細な研究結果の発表が行われた。
しかるに我が耳鼻咽喉科領域における他の重要な感覚であるところの嗅刺激に関しての人間脳波の観察は極めて僅微な記載しか見られずしかも基本的な面からの系統的な研究は皆無に等しい。我我は長年に渉つて嗅覚の臨床的研究を継続しており,また市原は第63回日本耳鼻咽喉科学会総会において特に診断と治療と題する宿題報告を果したので今回は嗅刺激による人間大脳々波の諸反応を観察しその知見をここに報告する。なお,音響刺激の脳波に及ぼす影響は近時,他覚的聴力測定の面で大いに検討が加えられ諸種の方法が考案されているが,我々の嗅刺激による研究結果も他覚的嗅覚検査法への応用面の検討に資する事が出来るわけである。しかし乍らそれには脳波自体が相当複雑な様相を呈するものであるのでまずその基本的な研究が十分になされる必要がある事は論を俟たない。
Observations on the changes that may be caused on the brain waves by olfactory stimulation are noted.
Seven different types of brain wave changes by olfactory stimulation are found. The effect of stimulation appears to be greater during sleep rather than when at wake; the rate of reaction is 94% for the former and 54% for the latter. There seemed to be no difference by change in the kind of olfaction. The degree of brain reactions was best recorded when the leads were placed over the parietal and occipital regions.
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