Japanese
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連載講座 新しい観点からみた器官
嗅上皮―嗅細胞と匂い分子の受容
Olfactory epithelium: Structure and receptive mechanisms
渋谷 達明
1
Tatsuaki Shibuya
1
1筑波大学生物科学系
pp.251-259
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900568
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近年まで,嗅覚の研究は一部の人々を除いてあまり重要視されていなかった。それは視覚などの感覚に比べて,あまり重要な感覚ではないという先入観のようなものがあったからでもある。したがって当然のことながら研究者の数が極端に少なかった。さらに嗅覚の解析的な研究のためには,「匂い」というものがまだかなりあいまいな要素を含んでいたことも一因であった。しかしここ十数年間の「匂い」や「香り」に対する社会的な関心の高まりも間接的に作用してか,嗅覚に関する神経生理学,分子生理学,生化学,行動遺伝学,心理学など多方面からの研究が急速に発展してきた。それらの研究成果がベースにもなって,食品や嗜好品の香り,健康や疾病にも影響を与えるといわれる香りなどの開発研究も盛んになり,いくつかの新しい匂いの計測法も考案されてきた。さらに臨床医学面では嗅覚障害者の治療などが適切に行なわれるようになっている。このように最近ではいろいろな面から嗅覚の重要さが見直されるようになってきた。
嗅上皮(嗅粘膜)は,組織学的には比較的単純な細胞構成をもつ粘膜であるが,とくに匂い分子の受容機構などは,最近明らかになったことが多い。ここでは嗅上皮の構造とともに,嗅細胞の匂い受容機構などについて最近の知見を述べることにしたい。
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